宇樹科技:「ロボットを生活の良きパートナーに」・中国
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【6月1日 Peopleʼs Daily】今年の中国中央電視台(CCTV)の春節(旧正月、Lunar New Year)特別番組の舞台で、花柄の衣装を身にまといシルクの紅い布を手にした16体のH1人型ロボット「福兮(Fuxi)」が初舞台を踏み、瞬く間にネット上で話題が沸騰した。この人型ロボットは中国の民用ロボットメーカー「宇樹科技(Unitree Robotics)」が製作したものだ。
この中国伝統の民俗文化と最先端技術を融合させたクリエイティブな番組『秧BOT(Yang BOT)』は、中国のロボット産業の飛躍的な発展を象徴する一例となった。
この番組の中で「宇樹科技」の技術的な力量が集中的に披露された。
2016年の会社設立以来、同社は「モータードライブ」技術を突破口に、「低コスト・高性能」を中核的理念として、10年足らずで、ロボット産業において独自の「中国の道」を切り拓き、「ロボットを千・万戸の家庭に届け、生活の良きパートナーにする」をスローガンに掲げ、着実に前進を続けている。
舞台の上で「H1人型ロボット」が披露した「秘密兵器」は、AI駆動の全身運動制御技術と360度全景深度感知技術による「周囲の環境を正確に把握する能力」だ。このロボットはAIアルゴリズムによって音楽を聴き分け、リアルタイムで音楽に合わせた動作を行うことができる。
これら一連の技術的ブレークスルーの背景には「宇樹科技」が人工知能や運動制御分野で蓄積した豊富な経験と技術力がある。
核心的技術のモータードライブと構造設計では、伝統的な油圧システムを排除し、自社開発の高性能モーター直接駆動技術を採用した。「トルク補償高速フィードアウト制御アルゴリズム」により高精度なパワー制御を実現し、コストを80パーセント以上削減した。
動的バランスとAIアルゴリズムにおいては、強化学習アルゴリズムとマルチエージェント協調計画技術の統合により、ロボットに搭載されたそれぞれの関節用モーターの作動誤差を大幅に低減することができた。
核心的パーツの自主開発においては、モーター、減速機、コントローラー、エンコーダー、レーザーレーダーなどの主要部品の国産化率が90パーセントを超えている。
上海杉達学院(Shanghai Sanda University)デジタルビジネス研究センターの唐樹源(Tang Shuyuan)副主任は「『秧BOT』番組に登場したロボットは、一般民衆が抱いていた人型ロボットの『機械的な印象』を打破した。その背景には、ロボットの運動制御能力の飛躍的向上、多機協調動作技術のブレークスルー、視覚認識システムの進化などがある。これらの成果は、中国が人型ロボットの分野においてすでに世界のトップクラスに躍進したことを示している」と述べている。
宇樹科技製品の進化の歴史は、四足ロボットから人型技術への移行というアップグレードの軌跡をたどっている。
第一段階では、四足ロボットの開発を通じて、ロボットの民生分野における新たな市場を開拓した。
17年に初の四足ロボット「Laikago」を発表、モジュール化設計により迅速な改良が可能となった。23年には産業用ロボット「B2」を発表し、静止時の耐荷重は最大120キログラム、連続稼働時間は4〜6時間に達した。
現在、同社の四足ロボットの製品ラインは教育、巡回検査、救助など多岐にわたる分野をカバーし、累計販売台数が1万台を突破、四足ロボットの世界市場シェアは60パーセントに達している。
第二段階では、人型ロボットの開発と量産の新たな標準を確立した。
23年8月、同社は等身大の人型ロボット「宇樹H1」を発表した。このロボットの最高走行速度は毎秒3.3メートルに達し、後方宙返りなど高難度の動作を行うことができる。強化学習アルゴリズムによる動的バランス制御を実現し、スマートEV車メーカー「上海蔚来汽車(NIO)」の工場で現在は搬送作業を担当している。
また同社は24年5月、人型ロボット「G1」を発売した。価格はわずか9万9000元(約198万8910円)、3本指で巧妙に力の制御ができ、手で物体をつかむのが可能となり、様々な産業分野で人型ロボットが利用される際のコストを大幅に削減した。
第三段階では、同社はオープンソースによるエコシステムの構築を進め、業界の参入障壁を下げた。
24年、同社は強化学習のコードライブラリをオープンソース化し、世界中から1万人を超える開発者が技術イノベーションに参加した。例えば、トレーニングからシミュレーション、さらに実機動作に至るまで、強化学習用ツール一式をオープンソース化し、開発者のコスト負担を大幅に軽減した。また、データ収集ツールや学習用データセットも公開し、人型ロボットに必要なデータ取得を支援している。
「宇樹科技」は技術的ブレークスルー、エコシステムの構築、応用シーンのイノベーションを通じて、自社の分野を越えての発展だけでなく、中国ロボット産業全体の価値のレベルアップを推し進めた。
現在同社は「コアパーツの自力製造」「上下流の提携深化」「資本政策支援」の「三位一体」の発展モデルを通して、中国のロボット産業チェーン全体の協同イノベーションをサポートし、自律制御が可能なロボットのエコシステムを構築し、世界的な競争力を強化している。
同社の取り組みは、中国ロボット産業の3つの発展方向を反映している。すなわち、「コスト競争力」から「技術標準を主導する力」へ、「限定的な単一の応用シーン」から「システム全体としての価値の提供」へ、「単なる代替手段」から「新たな価値の創出」へ、これら3つの方向である。
世界を見渡すと、ロボットは今や新たな産業形態を生み出している。
研究室から量産ラインへ、産業の現場から家庭用消費の分野へ、「宇樹科技」を代表とする中国のロボット企業は、技術イノベーションをエンジンとして、産業チェーンの連携を基盤として、応用シーンの拡大を方向性として、グローバルなスマート化の潮流の中で「中国智造(中国のスマート製造)」という新しい歴史の一章を記そうとしている。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews