【5月22日 AFP】ドナルド・トランプ米大統領は21日、同国を訪問した南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領を不意打ちし、南アで白人に対するジェノサイド(集団殺害)が行われている証拠と称する動画を見せた。トランプ氏は、こうした「白人ジェノサイド」のために、南アの白人農民が米国に避難していると主張した。

この異例のパフォーマンスは、普段は厳粛な外交の場である大統領執務室を、南アの白人農民が土地を追われ、殺害されているというトランプ氏の主張を展開する舞台へと変えた。

記者団が同席する中、トランプ氏は4分間の動画を大型スクリーンで上映させ、南アの黒人政治家が白人の迫害を呼び掛けている場面が映っていると述べた。

トランプ氏は「あなたは彼らが土地を奪うのを許している。彼らは土地を奪うと、白人農民を殺すが、おとがめなしだ」と主張。

トランプ氏は自身の主張を裏付けるものだとする新聞の切り抜きも見せたが、そのうちの一つには、南アではなくコンゴ民主共和国(旧ザイール)の写真が使われていた。

ラマポーザ氏は、1994年に廃止された、多数派の黒人から政治的・経済的権利を剥奪する残忍な人種隔離政策「アパルトヘイト」体制による歴史的不平等の是正を目的として1月に署名された土地収用法に基づき、南ア政府が白人農民から土地を没収しているとのトランプ氏の主張を否定。

「ノー、ノー、ノー、ノー」「誰も土地を奪うことはできない」と答えた。

また、犯罪率の高さで悪名高い南アの犯罪犠牲者のほとんどは黒人だと主張した。

ラマポーザ氏は「われわれは基本的に、米国と南アの関係を再構築するためにここにいる」と訴えた。

動画が再生される間、ラマポーザ氏は何度も発言しようと試みたが、トランプ氏の声にかき消された。ラマポーザ氏は席でぎこちなく身をよじりながら「これはいったいどこだ?」と付け加えた。

動画では、過激な極左野党議員ジュリアス・マレマ氏が「ボーア人を殺せ、農民を殺せ」と歌っている場面が映っていた。これは、白人少数派による支配に反対したアパルトヘイト時代の闘争にまでさかのぼる悪名高いスローガンだ。

動画は、南アで行われた抗議デモの映像で締めくくられた。その映像では、殺害された農民を象徴する白い十字架が農村部の道沿いに立てられていたが、トランプ氏はそれが殺害された白人農民の墓を示していると虚偽の主張をした。

ある場面で、ラマポーザ氏は「冷静な話し合い」を呼び掛けた。

ラマポーザ氏はその後の会談では平静を装い、11月に南ア・ヨハネスブルクで開催される20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)にトランプ氏が出席することを期待していると述べた。

さらに、昼食会では白人に対する暴力問題に「こだわる」ことはなく、米国と南アの当局者が貿易問題について協議する予定だと付け加えた。

「つまり全体として、今回の訪問は大成功だったと確信している」とラマポーザ氏は述べた。(c)AFP